●ツーリングの心
年間講読していると「サイスポ」は発売日の2日前には遅くとも届く。今月号はなんと自転車を32台プレゼント、総額600万円という太っ腹企画。そのすごさに圧倒されながらページをめくるが、今月号で一番うめ吉の心をとらえた記事は、かのゲイリー・フィッシャーが来日して「やまアド」の丹羽隆志さんと日本の里山を走ったレポートだった。
かつて「MTB」という用語を商標化し、文字通りMTBの生みの親であるゲイリー・フィッシャーも現在55歳。しかしその精力的な活動はとどまるところを知らない。
シングルギヤのバイクを駆り、初めて走る里山をアグレッシブに走る姿には丹羽さんも驚いていたが、うめ吉が感心したのは日本の里山を、単に山道としてだけとらえるのではなく、歴史・伝統・文化とつなぎ合わせて堪能している点だった。トレイル脇の積み重ねられた落ち葉があれば、「あれはなんだ?」と質問し、「サトヤマ」の意味を尋ね、「サムライの歩いた道か?」と聞いてくるゲイリーの好奇心、いや、トレイルから感じ取れる物全てを吸収し尽くそうという姿勢にたいへん好感を持った。
そうなのである。とかく我々はトレイルに一歩入るともう嬉しくなってしまって、ただ走ることだけに集中してしまいがちである。しかしその道には深い歴史があり、地元の人々の生活に深く根ざした場所なのである。周囲に目を凝らし、耳を傾ければ、あちらこちらにその生活の息吹が感じられるはずである。そしてそれらをじっくりと味わいながら走ることこそ、トレイルを総合的に楽しむということなのではなかろうか。
以下、サイスポからのフィッシャーの言葉の引用。
「MTBでトレイルを走る楽しさは、世界中のどこでも素晴らしい。そこに、その土地や歴史、食文化が重なってくると、もっともっとすばらしくなるよね。今日は温泉には入っていないけど、でも完璧な一日だよ!」
これこそツーリングの醍醐味! アメリカからやって来て、ひとしきり日本の里山を走った後、造り酒屋で出来立ての日本酒に舌鼓を打ち、はしを器用に使って塩辛をつまむMTB界のカリスマ・・・。そんな粋な55歳から、改めて自転車を使った遊び方の基本を教えられたような気がした。無性にツーリングに行きたくなった。

