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2008年03月20日

●校長先生の涙

 今日は朝から大雨注意報。おまけに強風注意報まで。休日の朝は道路も空いている。そこで今日は車で行くことにした。空いているのでさすがにスイスイと走れる。気が付けばもう職場だ。「やっぱり、空いていれば車は速いなぁ」と思いつつ時計を見たら、何と所要時間は自転車とほぼ同じ35分くらい。自転車、恐るべし・・・。

 さて、今日はあいにくの雨だったが、恐らくはあちこちの学校で卒業式が行われたはず。着飾った親子が傘を差して歩いている、そんな光景をちらほら見かけた。自宅に帰ってから撮りためたドラマを見たら、やはり卒業式のシーンが出てきた。そこで自分の卒業式を思い出してみた。もう何年も前の話であるが・・・。

 一番強く頭に残っているのは、小学校の卒業式である。4年生になる時に転校してきたその小学校は、木造平屋建ての、田舎の小さな学校だった。児童数1000人を越えるマンモス校から転校してきたうめ吉にとって、各学年1クラスずつしかないその小学校には本当に驚かされた。朝礼の時に、全校生徒の前で自己紹介をさせられた時のことを今でもよく覚えている。

 さて、卒業式の話。なぜ印象に残っているかと言えば、その卒業式の「校長先生のことば」の最中に、何とその校長先生本人が泣き出したからだ。太っちょで背が低く、黒縁の眼鏡をかけた無口な先生で、タヌキのような風貌の先生を、子ども達はみな慕っていた。その先生が、話の最中で突然泣き出したのである。

 「みんなのことは本当にかわいくて仕方がない・・・。それなのに、そんなみんなを、中学校にとられてしまうかと思うと・・・。」

 そう言ったかと思うと、校長先生はポケットからハンカチを取り出し、眼鏡を外して目にあてた。しばしの沈黙・・・。うめ吉はその光景にびっくりして、思わず見入ってしまった。恐らくそこにいた子ども達や保護者も同じであったろう。それからしばらくして校長先生は気を取り直し、再びボソボソと話し始めたのだが、その後の話は全く覚えていない。

 保護者や来賓の人たちが列挙する公式な場で、校長先生は自分の立場を忘れ、実に素直で、正直な、人間味あふれる姿をもって子ども達を見送ってくれた。校長先生の話が終わったとき、なぜだか分からなかったが、胸にジーンとこみ上げるものがあった。飾り気のない、うそ偽りのない素直なことばが、そこに居合わせた人たちの心を打った・・・。

 あれからもう30年の月日が経つが、今でもあの校長先生が泣いている姿をはっきりと覚えている。それから中学校、高校、大学と、いくつかの卒業式を経験したわけだが、話の最中に泣き出す校長先生など、もちろん後にも先にも二度と現れなかった。今思い返してみても、何という温かい心を持った先生だったのかが痛いほど分かる。この世知辛い世の中・・・。義理も人情もすたれ、何となく人間から温かみが失われてしまった感のある現代社会だが、こうした人を包み込む優しさにあふれた人がいたのだということを、うめ吉はいつまでも忘れないようにしたい。

 小学校を卒業してから何年経ったときだったろうか。母親からその校長先生が定年退職してすぐに亡くなったことを聞いた。その時、まさに子どもの教育に全力を傾けた、奇特な方だったのだという思いを新たにしたものである。

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